バロックトランペットの仕組みと運指

今日はバロックトランペットの穴の仕組みと使い方について解説します。
バロックトランペット購入の際や、初めて触れる時の参考にしてもらえると嬉しいです。

目次

バロックトランペットの仕組み

まずは穴の作用について説明します。全部の穴が閉じられている場合、トランペットの管の中で空気が振動し、その倍音に基づいた音を演奏することができます。
そして穴の部分を解放した場合、人工的に節点(node)の場所を変えることにより、空気の振動が変わり、出せる音がシフトされます。

バロックトランペットの種類

バロックトランペットを購入する場合、基本的にオプションが2つあります。
一つは3つ穴、もう一つは4つ穴。どちらも機械的な原理は同じですが、それぞれ長所と短所がありますので、まとめてみました。

3つ穴のメリット・デメリット

    

3つ穴のメリット

  • 一般的に4つ穴に比べて楽器本体が短いため、穴が体に近い部分にあり、持ちやすい
    (必要なチューブの長さは同じなので、その分巻いてある)
  • 各穴の間隔が狭いので、手は置くだけで穴の位置にフィットする
  • 指3本しか動かさなくていい
  • 本体が55cm未満に分解可能なので、モダントランペットのケースに入れることができる。飛行機に乗る時も手荷物サイズなので安心。
Danny
Danny
ケースを特注しなくていいのは結構大きいポイント!
3つ穴のデメリット

  • ナチュラルトランペット(穴なし)に組み替えることが容易ではない
    (曲がっている分、管を換えにくい)
  • オリジナルのナチュラルトランペットと比べると、ベル管が短くカットされているので、テーパー(まっすぐの管ではなく、徐々に広がっている部分)が短い。
    同じ長さのテーパーを作るためには、管の巻いている部分にも広がりを持たせることになるが、設計するのが非常に難しい。
  • テーパー管が短い、もしくは曲がっている部分にテーパーが作られることにより、音程が安定する楽器に仕上げることが難しい。音程がとりにくい楽器になりがち

4つ穴のメリット・デメリット

   

4つ穴のメリット

  • 管を一本かえるだけで、ナチュラルトランペットにかえられる
  • オリジナルのナチュラルトランペットのテーパーの長さが保たれている
  • 3つ穴に比べて音程がとりやすい楽器に設計しやすい
    (同質レベルの素材と技術で製作したものを比べた場合)
Danny
Danny
テーパーが長いと音が豊かだよ!
4つ穴のデメリット

  • 穴が体から遠いので、腕をうんと伸ばさないといけない
  • 各穴の間隔が広いので、手をグッと広げないといけない
  • 指4本の操作が必要
  • 長いケース(70-80cm)が必要。航空会社によっては手荷物で通らない。

演奏してみよう

始めたての頃によくある問題は、穴がちゃんと塞げていないことによって、空気が漏れてしまい、望む音がちゃんと出ないということです。当たり前のことなのですが、これには本当に慣れが必要なので、初めは常に念頭に置いておくことをお勧めします。

運指について

 全部閉じた状態(ナチュラルトランペットの状態)で出せる音は概して不安定。
せっかく穴があるので、他にオプションがある時は、穴使用の方を採用する。

 穴を開けると音程は安定するが、開ければ開けるほど音はぼやけて聞こえる。
その為、開放する穴は基本的に一つのみ。

赤字を採用。赤字箇所の番号を開ける。


選択が必要な運指

さて、それぞれの運指をお伝えしましたが、上記の表にオプションが2つある箇所がありますよね。3穴の Dis & A4穴の D & Bは、自分自身で色々試して、一番いい運指を選択する必要があります。
楽器によって、また使用するマウスピースによって、どちらの運指がより安定する音程と音色がでるのか、まずは自分の楽器を知り尽くすことが大切です。これは実践あるのみ。愛を込めて根気強く試してみてください。
そして実際にグループで演奏する際に、グループ全体の響きを聴いて、よりフィットする方を選ぶ、ということが大切です。

3穴のBについては、基本は同じように研究が必要なのですが、一点異なることは、♭寄りか#寄りかの二択というところです。これには調性も考慮に入れる必要があり、例えば、調がGマイナー(ト短調)の場合には、#気味である2番孔を解放する運指を選ぶのが正解だと思います。理由は、マイナーコードの短3度はできるだけピュアな響きにした方がいいから、ちょっと高めがいいってことなんですが、ピュアって何?ってことについては、また別の記事にて説明しようと思います。

とまぁ、ちょっと難しいことを言いましたが、アドバイスとしては、高いとか低いとか考えるより、全体の響きをよく聴いて、その音楽の中により自然に溶け込む音色を奏でるようにすると、堅くならず結果的にいい演奏ができると思います。

結局どっちって話

これはほんとにどっちって決めがたいのですが、デニーは4穴をメインで使っています。

理由はいくつかあって、今はオランダを拠点にしていて、国外の仕事といってもドイツもフランスも電車で行けちゃうので、大きさはあまり問題ではないことが一つ。

オランダにとても信頼できる4つ穴のメーカさんがいることが一つ。バロックトランペットを扱える職人さんが近くにいて、都度微調整してもらえるのはとても心強いのです。

そしてもう一つ大きな理由ですが、まず現代の音楽界は予算が限られていて、リハーサル1回でコンサートに臨むこともしばしばあります。フリーランスの音楽家というのは、オーケストラに所属していつも同じメンバーで演奏しているわけではないので、初めて一緒に演奏する人達と、音程がとりにくい楽器で四苦八苦している間にもう本番、などという状態では、もう次からお呼びがかからなくなります。(死活問題!)
少ないリハーサルの中で、他のメンバーといい音楽を作る可能性を最大限に広げたい、というのが最大の理由です。

という具合でデニーは現在のところ4つ穴ですが、結局のところ楽器次第です。
とにかく実際に工房へ行って吹いてみて、音が気に入ったとか、ときめいたとか、単純に持ちやすいとか、吹きやすいとか、自分がこれだと思うものに出会えることが一番!皆様も自分にピッタリの楽器が見つかりますように。

Danny

楽器との出会いは運命なり!

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